鳴り響く電話「お前の婚約者は俺がもらった」
Aとの穏やかな休日を楽しんでいたある日のこと。突然、職場の先輩から電話がかかってきました。休日に連絡がくることは珍しいため、何事かと思って電話に出ると、受話器越しに彼の高揚した声が響きました。
「おい、残念だったな! お前の婚約者は俺がもらったぞ。彼女、お前とはもう終わりだってさ!」
先輩は勝ち誇ったように笑っています。さらに電話の向こうからは、聞き覚えのある元婚約者の声も聞こえてきて……。
どうやら、僕に付きまとおうと会社の外で待ち伏せしていた元婚約者がたまたま通りかかった先輩から声をかけられたようです。新たな金づるを探していた彼女は「彼の婚約者だけど、ひどい扱いを受けている」と嘘をつき、僕にダメージを与えたい先輩はそれを真に受けて「今の婚約者を奪ってやった」と完全に勘違いしているようでした。
浅はかな略奪愛の末路
僕は冷静に事実を告げました。
「先輩、彼女に騙されてますよ。その人とは金銭問題が原因で、数カ月前に婚約破棄した『元』婚約者です。今は別の人とお付き合いしています」
一瞬、電話の向こうが静まり返りました。僕はさらに続けます。
「彼女は深刻な浪費癖があり、多額の借金も抱えていると聞いています。もし彼女とお付き合いされるおつもりなら、そのあたりも覚悟しておいたほうがいいですよ」
その瞬間、「借金なんて聞いてないぞ!」と彼女を問い詰める先輩と、「私は運命の人だって言ってくれたじゃない? 助けてよ!」とすがりつく彼女の声が聞こえてきました。修羅場と化した電話を、僕は静かに切りました。
その後、先輩は元婚約者から執拗に金銭的援助を求められるようになったようで……。職場でも待ち伏せされ、彼女が大声でわめいているところを目撃した社員もいました。その結果、社内では「先輩が後輩への嫌がらせ目的で借金まみれの女性に引っかかった」という噂が広まってしまったのです。
プライドの高い先輩は、周囲からの冷ややかな視線に耐えられなかったよう。居づらくなったのか、逃げるように会社を退職していきました。
話しづらいことでも、困っていることは抱え込まずに他の人に相談してみることが大切だと学んだ経験でした。今回の件は、僕ひとりでは解決することができなかったと思います。そんな僕は、困り果てていたときに力を貸してくれたAと、穏やかで幸せな日々を過ごしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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